《 クロスファイア 》

宮部みゆき:著

生まれながらに特殊な能力を持つ青木淳子は、

その能力故に自身を、装填された銃と考え、

法律では罰し得ない‘犯罪者達’を処刑した経験がある。

深夜の廃工場で、

瀕死の男を始末する為に運び込んだ4人の若者達を目撃した淳子は、

その力――念力放火能力(パイロキネシス)を放ち、

3人の若者を炎上させるものの、

主犯格の若者は、淳子に銃で傷を負わせた上、

瀕死の男にとどめをさし逃走してしまう。

男の最後の願いである、恋人の女性・ナツコを救い出すべく、

逃走した若者の追跡を淳子は開始する。

映画化された事を知っていた私は、

念頭に中谷美樹を置いて読んだが、

実際は矢田亜希子が主人公を演じていた。

絶対、中谷美樹だと思う。

書店で見掛ける度に、買おうかなぁ〜と思いながらも、

踏み止まって良かった。

家主が買っており、自分は読んだからと、上巻を私に差し出し、

私はと言えば、家主が下巻を読むのを待たずに読み終えてしまい、

結局、家主より先に全てを読み終えたと言うわけだ。

上巻を読んでおきながら、

下巻を読まずにグズグズしてるなんて、信じられない。

私は、ページを繰る暇も惜しかった程だ。

この所ずっと、過去に読むのを中断していたモノばかりを

整理の意味もあり、手当たり次第に読んでいた為、

久々に、手応えのある作品に出会えたという喜びがあった。

エンターティメント性、抜群。

読み始めてすぐに、登場人物の名前に引っ掛かる。

石津ちか子――見覚えのある名前である。

はたと閃いて、『R.P.G.』 を探し、確認。

やっぱりだ。

作品の順序としては『クロスファイア』の方が先になるので、

『R.P.G.』 の中で触れられている不可解な展開をした大量連続殺人事件とは、

本書の事だったのだ。

ただの警察モノであれば不可解も何も、

それは迷宮入りの様相を呈すのだろうか、

本書は、言ってしまえばSFである。

警察内部でこの事件が、どういった処理のされ方をしたのか、

具体的には書かれていないし、また、

決着のつけようもないであろう。

ただ、物語の主要な部分を占める石津ちか子は、

真実に近付いた感があり、本庁から杉並署に移動になる。

それは即ち、真実を暴かれれば、

立場上、拙い事になる上層部の人間が存在するのだと言う事でもある。

ミステリー的に読めば、犯人が先にわかってしまっているという点で、

倒叙ものだと言えるが、そこは宮部さんのこと、

黒幕も裏切りも用意しておいてくれている。

辛くて悲しい結末ではあるけれども、

他にどんな方法があったのだと問われたら、

返す言葉は何もない。

これから下巻は家主の元へ戻り、

その内に上・下巻セットで息子の手へと渡るであろう。

我が家でまわし読みされる唯一の作家が、

宮部みゆきなのだ。

私が読んだ宮部作品の中のSFでは、

SF色の濃い連作短編を別にすれば、

『龍は眠る』 『魔術はささやく』 に続く3作目の長編になる。

(10/14/02)


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