《 第三の眼 》

THE WATCHER

ケイ・ノルティー・スミス:著 小泉喜美子:訳

大統領候補のブレーンも勤める著名な社会学者が謎の転落死を遂げた。

直前に彼と口論していた女性記者のアーストリッドに殺人の容疑がかかるが、

彼女は事故を主張するばかりか、逆に驚くべき告白をする。

死んだ社会学者は、悪魔的な第二の顔を持っていたというのだ。

アーストリッドの無実を信じ、かつての恋人であるデイモン刑事は捜査を開始する……

アメリカ探偵クラブ賞最優秀新人賞受賞の、緊迫のサスペンス。

〜ハヤカワミステリー文庫より〜

読み終わってこれほど衝撃を受けたミステリーは珍しい。

面白かったとか、主人公にマイッタ!とか、そういう種類のものではなく、

「有り得るかもしれない、これ…」と背筋が寒くなるような読後感。

社会的に確固たる地位を築いている被害者?マーティン・グレンジャーは、

目の前に座らされてトクトクと聞かされれば、

首を縦に振ってしまいそうな平等主義を唱える、戦慄の思想家である。

人間ならば誰もが抱いているであろうコンプレックスを微妙にくすぐる説得力を持っている。

しかし、例えそれが間違った考え方だとしても、頭の中であれこれ想像している内はまだしも

(想像するだけの殺人は罰せられない…)

実践されると、そこには自ずと不幸は生み出されるのである。

かつての恋人達がそれぞれの立場で事件に臨み、

再び愛し合うようになるまでの心理描写、登場人物の掘り下げ方、

どれをとっても巧みで、

そして、驚愕の真実が明かされる法廷の場面まで

――大どんでんがえーし!とも言う――

ワクワクしながら読み進んで行けるミステリーだった。

1994年に初読。

友人に貸したら、バラバラになって戻ってきたので(なんでやねん…)

昨年買い直した。

(02/02/02)



BOOKs TOP