《 マイナス・ゼロ 》

タイムマシンを駆って、少年時代の自分の住んでいた懐かしい

古き良き時代にやってきたひとりの男…。

非凡な空想力と奇想天外なアイディア、

ユーモア精神と奇抜などんでん返しで、

タイムトラベル小説の最高峰と謳われ、

今や日本SF史の記念碑的存在となった広瀬正の第一長編小説。

〜集英社文庫より〜

タイトルからは想像もつかない内容で、

読み始めたら止まらなくなる、そんな作品。

物語は、第二次世界大戦末期の東京を舞台に始まる。

主人公の中学生・浜田俊夫は空襲の夜、

虫の息の隣家の「先生」から、思いがけない事を頼まれる。

それから18年後、約束を果たすべく

半信半疑ながらも奔走する俊夫。

そんな俊夫の目の前に現れたのは、あの空襲の夜、

行方不明になっていた先生の娘、啓子であった。

しかも彼女は、あの当時の年齢・服装のままで…。

SFと言えば、空想科学小説だとばかり思い込んで敬遠していた私は、

星新一や筒井康隆や平井和正を知ってから、

それが如何に偏見の塊で、

どんなに損をしていたか思い知らされる事になった。

確かに空想科学小説ではあるのだけれど、

私の持っていた科学のイメージとは、かけ離れていたのだ。

あの当時は私にとって文字通りSF乱読の時期で、

タイトルなど、殆ど覚えていないのだが、

長編なら幻魔大戦ショートショートならおーい、出て来い

短編で走る取的等が深く心に残っている程度。

(その内、思い出すでしょう、多分…)

そんな中で、この『マイナス・ゼロ』は忘れられない作品なのだった。

理由は簡単、と〜っても面白いから(笑)。

何度読み返した事であろう。

初版本を私に貸してくれた現・家主が、

そんな事してるの見たことないのに

私はと言えば、この作品が異常に気に入ってしまい、

それから広瀬正を読み漁る…と言っても

この作家は残念な事に寡作で、

それほど多くの作品を残してはいない。

「ツィス」「エロス」や「T型フォード殺人事件」も読んだけど、

私はやっぱりこれが一番好き。

それくらい衝撃度の大きい小説だったのである。

この本を友人に貸したら、「とても怖かった」と言っていた。

主人公を我が身に置き換えれば、その感想も納得だが、

ただ、タイムマシンがあれば

今の自分の運命を変える事が出来るかもしれないと思った事のある人なら

(ない人でもいいんだけど)

興味をそそられる事、間違いなしである。

読んで損はないと思う。

古き良き時代の東京・下町をノスタルジックに描き、

タイム・パラドクスと呼ばれる一種の矛盾と辻褄合わせを

どんでん返しに使ったラストも秀逸。

皆さん、あっと驚きますよ(笑)。

作家・広瀬正についてチラッとね。

広瀬 正:1924年東京生まれ。

日大工学部卒業後、バンド「広瀬正とスカイトーンズ」を結成。

同バンド解散後、同人誌「宇宙塵」「SFM」誌などで活躍。

73年「鏡の国のアリス」で星雲賞受賞。

1972年没。


最後に、私が残念でならないのは、

転居を繰り返す間に、初版本が行方不明になった事。

あんなに大事にしてたのに、失くすなんて信じられない。。。

(10/02/00)


BOOKs TOP